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新技術・新構造で、お客様とともに新しい映像体験を創造

これまでの課題を一挙に解決、積層型CMOS イメージセンサ

従来のCMOSイメージセンサは、同一シリコン基板上に画素 (センサ) 部分と回路 (ロジック) 部分を形成しており、いわば"水と油"を共存させるため、それぞれの特性の最適化が難しいなど多くの制約を受けていました。
ソニーが、次世代の裏面照射型CMOS イメージセンサとして開発した『積層型CMOSイメージセンサ※1』は、これらの課題を一挙に解決。
画素部分と回路部分を積層することで、小型化、高画質化、高速化などを達成しつつ、多彩な機能を自由に組み込むことができます。
ソニーは、この新技術を通してみなさまとともにセットの差異化につながる機能を、映像の新しい楽しみ方を、創造していきます。

※1 プレスリリース:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201201/12-009/

これからのイメージセンサの進化軸 より楽しく、心地良い映像体験を実現

ソニーは「人間の目を超えて ─ Super Reality の実現 ─」という目標を掲げ、イメージセンサの高速化、高画質化を追求しています。スマートフォンなどの普及に伴い、カメラの使われ方も多様化するなか、今後はこうした進化軸に加えて高機能化という新たな進化軸を設定。
「より楽しく、心地良い映像体験を実現」するための仕掛けを積層型CMOSイメージセンサの中に組み込むことで、お客様のセットの差異化に寄与します。

人間の目を超えて ─ Super Reality の実現 ─

画素と回路に対する期待

イメージセンサに対してセットのお客様が求められていることは、画素に対する期待と、回路に対する期待とに分かれます (図1) 。
画素については、サイズ、速度、感度、画素数といった基本性能のさらなる向上が求められています。たとえば、画素の微細化が進むに連れ、高感度化は困難になっています。しかしソニーでは、たとえば1ルクス (月の明かり程度) でもしっかりとした画が撮れるのがイメージセンサであると考え、基本性能を今一度厳しく見直しています。
回路については、お客様からよく「セットの差異化につながるような新しい仕掛け──たとえば"楽しさ"や"心地良さ"をイメージセンサ側から提案してほしい」という話を聞きます。特に「ソニーはデジタルイメージングテクノロジーを大きな強みとする会社なのだから、研究所のIP (知的財産) などをもっと活用したものを提供してほしい」という要望もあります。
さらに、カスタマイズ対応への要望も非常に強くなっています。

サプライヤとしてのソニーの課題

こうした期待・要望に応えるためには、いくつかの課題をクリアしなければなりません (図2) 。
第一に、画素と回路の各々の製造プロセスは本来まったく相容れないものであり、まさに"水と油"です。たとえば、画素の集光率を高めるために光導波路を組み込むことにしたとします。そのためにはドライエッチングを行うことになり、さらには、シリコン結晶のダメージを回復するためにアニール (熱処理) 工程が必要だと画素側では考えます。しかし回路側からすると、トランジスタのパラメータが変化してしまうので、熱処理プロセスは断固として避けねばなりません。このように、画素と回路が同一シリコンに形成されるがゆえに、画素側で特性を追及する際に回路側からの制約が生じてしまいます。
また、回路にとってはまったく不要であるにもかかわらず、画素で必要なために実施せざるを得ないプロセスもあります。たとえばオンチップカラーフィルタやマイクロレンズなどは、画素領域のみならず回路領域でもいったん形成され、後ですべて取り除かれます。同一シリコンに形成されるために、このような非効率を強いられるわけです。
プロセスライン世代による制約もあります。現在、ソニーではCMOSイメージセンサを65nmプロセスルールで製造しています。同一シリコンに形成されるので必然的に回路も65nmプロセスルールで製造しなければならず、これが大きな制約となっています。外部のファンドリメーカに生産を委託するとしても、最適なロジックプロセスを自由に選択することができませんでした。
さらに、性能とコストの両面でカスタマイズが困難になっています。こうした課題を一挙に解決するのが、積層型CMOSイメージセンサなのです。

図1 イメージセンサに対するセットメーカのお客様ニーズ 
画素 (センサ) 
基本性能のさらなる向上
・小型化・高速化・高感度化・多画素化 
回路 (ロジック) 
・”楽しさ”、”心地良さ”の提案・ソニーのデジタルイメージングテクノロジーの提案・カスタマイズの対応
図2 イメージセンサのサプライヤとしてのソニーの課題
画素 (センサ) ・イメージセンサ専用プロセスとロジック標準プロセスの相性の悪さ→センサプロセスへの制約 
回路 (ロジック) 
・ロジック不要プロセスによる非効率・プロセスライン世代による制約・性能とコストよりくるカスタマイズの難しさ

構造を大きく変える2つの発想

裏面照射型CMOSイメージセンサは、シリコン基板上に画素や回路などを形成し、裏面側のシリコン基板を数マイクロメートルまで薄くして光を取り込む構造です。このままの状態ではペラペラに薄くて搬送できないので、従来は受光面 (裏面) とは逆側に支持基板を重ね合わせていました。両者の熱膨張率が違うと剥がれやすくなってしまうため、支持基板にもチップと同様のシリコン基板が用いられています。
支持基板もシリコン基板であるのなら、ここに回路を形成してしまえばいい、というのが第一の発想です (図3) 。
さらに、もともと画素と回路を同一シリコン基板上に形成することには無理があるのだから、完全に分離させてしまおうというのが第二の発想です。

図3 次世代の裏面照射型CMOSイメージセンサ 「積層型CMOSイメージセンサ」 
新発想 1) 支持基盤の有効活用 2) 画素領域と回路領域の完全分離 
従来型 裏面照射型CMOSイメージセンサ→新開発 積層型CMOSイメージセンサ

完全分離・積層型のインパクト

積層型CMOSイメージセンサによって得られるメリットを、先述の期待や課題をふまえて紹介します (図4) 。

エンドユーザのメリット

完全分離により、画素は回路の制約を受けることなく、高画質化に特化したプロセスを自由に採用できるようになります。これにより、感度などの基本性能が飛躍的に向上します。
また従来は、ソニーが開発するデジタルイメージングテクノロジーを、お客様のセットの差異化につなげていただく際にタイムラグがありました。たとえば、お客様がセットに搭載する2年後に完成予定の信号処理LSIに、ソニーの新しいアルゴリズムを採用していただくためには、現時点でほぼ技術が確立していなければなりません。しかし積層型CMOSイメージセンサであれば、お客様のセットの開発と並行して、ソニーの開発を続けることが可能です。そして最終的にソニーが責任を持って、積層構造の回路部分に新技術をIPとして組み込み、提供します。
これによりタイムリーな新機能の追加が可能になり、エンドユーザの撮影の楽しみ方が従来以上に広がります。

セットのお客様のメリット

積層構造により、小さなチップサイズで大規模な回路の搭載が可能となるため、差異化機能をより搭載しやすくなります。さらに、回路が形成されたチップに先端プロセスを採用することにより、信号処理の高速化・低消費電力化も可能です。あわせて設計のしやすさ、自由度も向上します。

ソニーのメリット

ソニーの強みであるデジタルイメージングのIPの早期提供、外部のファンドリメーカとの協業による生産能力の増強、カスタマイズ要求への早期対応などが可能となります。

図⒋積層型CMOSイメージセンサの可能性 
エンドユーザ:
●カメラ基本性能の向上
●タイムリーな新機能追加による新しい商品価値
●”楽しさ”、”心地良さ”の体験 
セットメーカ:
●差異化機能を小型に実現
●先端ロジックプロセスによる高速・低消費電力化
●設計のしやすさ、自由度の向上 
ソニー:
●ソニーデジタルイメージングテクノロジーをフル活用
●外部委託を利用した最適ロジックプロセスの自由な選択
●センサ生産能力の増強とセンサの高画質化
●カスタマイズ要求への早期対応

回路規模と小型化

代表的ないくつかのイメージサイズに対して、積層化される回路領域に搭載可能な回路規模とそのプロセスルールの関係を示します。デジタルスチルカメラ (DSC) では、1/2.3 型のCMOSイメージセンサが主流です。この面積の回路領域で、45nmのプロセスルールを用いた場合、ハイエンドのデジタルスチルカメラ用DSPに該当する信号処理回路の搭載が可能です。65nmルールでも、ミドルクラスDSCの信号処理を搭載できます。
1/3.2型では65nmルールで監視カメラなど、45nmルールであればミドルクラスDSCの信号処理の回路規模が搭載できます。
次に、画素領域から回路領域を完全分離することで、表面積がどれほどダウンサイジングできるかを紹介します。
当社の1/4 型CMOSイメージセンサにおける比較では約30%、カメラ信号処理機能が搭載されている携帯電話用のSoCタイプのCMOSイメージセンサでは約40%の小型化が可能です。また、CMOSはCCDよりも大型というのが従来の常識ですが、積層型CMOS イメージセンサではレジスタ部分が不要になるため約20%の小型化が可能です。医療用カメラをはじめとする産業用途など、多くのアプリケーションで有利な構造となっています。

ソニーからの提案:よくある撮影ミスを解消する2つの新機能

積層型CMOSイメージセンサでは、お客様のDSPとの間で役割分担を図りつつ、回路領域にソニーのデジタルイメージングのIPや、お客様の開発された機能を柔軟に組み込むことができます。今後、カメラの進化形をご一緒に考えさせていただくうえで、まずソニーが提案する新機能を紹介します。

1 暗い部屋や夜でもきれいに撮影できる独自の「RGBWコーディング」機能

従来のRGB画素にW (白) 画素を加えた「RGBWコーディング」機能を搭載することで、高感度化を実現し、室内や夜景などの暗いシーンでもノイズの少ない高画質な撮影が可能となります。
W画素を加えると、感度を上げられる利点がある反面、画質が低下するという課題がありましたが、今回、独自のデバイス技術と信号処理の開発により、画質を損ねることなく高感度化を実現しました。

従来のRGB方式 新開発「RGBWコーディング」方式

2 逆光でも色鮮やかに撮影できる「HDR (ハイダイナミックレンジ) ムービー」機能

通常、明るい屋外を背景にした室内での撮影のように、暗所と明所が混在する撮影シーンでは、暗い部分の黒つぶれや明るい部分の白とびといった現象が起こりやすくなります。この現象を解決するため、本機能では、撮影時に一画面内で2 種類の露出条件を設定し、それぞれの露出条件で得た画像情報に対し適切な信号処理を施します。これにより、ダイナミックレンジの広い画像を生成し、逆光などの明暗差が大きいシーンでも背景と被写体を色鮮やかに撮影できます。

従来例 HDR ムービー

両機能を搭載する積層型CMOSイメージセンサをスマートフォンなどに組み込む際、すでに機器側で採用している信号処理を変更することなくお使いいただけます。

両機能を搭載した商品の出荷予定

1/3.06型 有効約1300万画素 積層型CMOSイメージセンサ

2012年6月サンプル出荷予定

1/4型 有効約800万画素 積層型CMOSイメージセンサ

2012年8月サンプル出荷予定